テクニカルインフォメーション

逆相カラムにおける核酸分析のポイント

アンチセンス、siRNA、アプタマーなどの核酸医薬品は、オリゴ核酸(オリゴヌクレオチド)を薬効本体とし、低分子医薬品、抗体医薬品に次ぐ次世代の医薬品として期待されています。
オリゴヌクレオチドの逆相分離では、イオンペア試薬を用いることが一般的です。ここでは、修飾型核酸を含むオリゴヌクレオチドのイオンペア逆相分離をご紹介します。

イオンペア逆相LC/MSによるオリゴ核酸の分離

イオンペア試薬の種類・濃度による比較

イオンペア試薬の種類や濃度、有機溶媒を組み合わせて分離やLC/MSの感度を比較しています。UVのクロマトグラム(赤)は移動相の種類に関わらず、グラジエント勾配を最適化することにより良好な保持の分離が得られています。ESI-MSの強度(オレンジ)は、イオンペア試薬の種類および濃度に大きく影響され、HFIP-TEA/メタノールが最も高感度となっています。

Column Hydrosphere C18 (3 µm, 12 nm) 50 X 2.0 mmI.D.
Flow rate 0.2 mL/min
Temperature 35ºC
Detection UV at 269 nm (red), ESI negative mode (orange)
Injection 5 µL (25 pmol/mL)
eluent abbreviations
TEAA

triethylammonium-acetate

DBAA

di-n-butylammonium-acetate

HFIP

1,1,1,3,3,3-hexafluoro-2-propanol

TEA

triethylamine

HFIP-TEAの濃度による影響

HFIP-TEA移動相での14-21 mer RNAの分離を、HFIPとTEAの濃度を変えて比較しています。TEA濃度を1から4 mMに変える(a,b)と保持時間はおよそ2倍になり、HFIP濃度を50 mMから100 mMに変える(b,c)と保持時間は約1.5倍になります。イオンペア試薬やHFIPの濃度は分離や保持時間に影響を与えます。

    RNA sample

  1. 5'-CAC UGA AUA CCA AU-3' (14 mer)
  2. 5'-UCA CAC UGA AUA CCA AU-3' (17 mer)
  3. 5'-UCA UCA CAC UGA AUA CCA AU-3' (20 mer)
  4. 5'-GUC AUC ACA CUG AAU ACC AAU-3' (21 mer)
Column YMC-Triart C18 (1.9 µm, 12 nm)
50 X 2.1 mmI.D.
Eluent A) Buffer, B) methanol
5-15%B (0-10 min)
Flow rate 0.42 mL/min
Temperature

65°C

Detection UV at 260 nm
Injection

1.0 µL (2-4 nmol/mL)

ホスホロチオエート型オリゴ核酸の分離

オリゴ核酸のリン酸基の酸素原子が硫黄原子で置換されたホスホロチオエート型オリゴ核酸(S化オリゴ)の分離例を示しています。S化オリゴなどの修飾型核酸はカラムへの吸着が強い傾向にありますが、緩衝液をHFIP-TEAにすることで良好なピークが得られています。また、Triart C18では他社のオリゴ核酸用カラムと比較しても吸着が少なくピーク形状は良好です。

Column size 50 X 2.1 mmI.D.
Flow rate 0.42 mL/min
Temperature 65ºC
Detection UV at 260 nm
Injection

1 µL (2 nmol/mL)

変性HPLCによる2本鎖siRNA分析

有機シリカハイブリッドカラムYMC-Triart C18を用いて、同一の2本鎖siRNAを異なる移動相条件(イオンペアや有機溶媒の種類など)で、それぞれカラム温度を30~60°Cの間で変更して分析した結果を比較しています。
Condition A,Bともに、カラム温度の上昇に伴ってピーク形状は良好となり、近接した不純物との分離が向上しています。DNAやRNAのような分子の大きな化合物では、高温条件にすることで物質移動速度が改善し、ピーク形状や分離が向上する傾向にあります。
Condition Aの全ての温度およびCondition Bの30°Cでは、2本鎖RNAが1ピークとして検出されていますが、Condition Bの40°C以上では、カラム内で変性して生じた1本鎖RNAがそれぞれ分離され2ピークとして検出されています。このように、高温条件で2本鎖から1本鎖に変性させて分析する「変性HPLC (Denaturing HPLC)」は、遺伝子変異解析などの目的で広く用いられています。
同じ温度条件下でのCondition AとBにおいて、非変性状態/変性状態に差が見られるように、2本鎖DNAやRNAの変性は温度以外にも、塩のイオン強度(種類,濃度)やpH、溶媒の極性などの影響を受けます。分析対象物や目的(未変性状態での分析、あるいは変性状態での分析)に応じて、カラム温度や移動相条件を最適化することが有効です。
高温条件での検討には、一般的なシリカ基材の逆相カラムでは耐久性が劣るため、Triart C18のような有機シリカハイブリッド基材のカラムが有効です。


Column YMC-Triart C18 (1.9 µm, 12 nm)
100 X 2.0 mmI.D.
Condition A Eluent A) 10 mM di-n-buthylammonium acetate (pH 6.0)

B) methanol

Flow rate 0.2 mL/min     35-60%B (0-15 min)
Detection UV at 269 nm Condition B Eluent A) 20 mM triethylammonium acetate (pH 7.0)
Injection 1 µL (5 nmol/mL)     B) acetonitrile
        5-12%B (0-20 min)